思いがけない場所へ

ある日のこと、出かける途中、車のサイドガラスの向こうにカマキリがいることに気付きました。
運転席のすぐ横です。非常に驚きましたが、急いでいたので車を停めることもできません。
車が進むにつれ、カマキリは向かい風に大きく揺れながら、必死に車につかまっています。車と同じ方向を向いて、風に吹かれながら一緒に走っているようでした。

なんとかゆっくり車を走らせていると、ふと気づいた時には、カマキリはサイドミラーの上に移動しています。
一体どうやって、この風の中、落ちずにここまで移動したのか……。

驚きながら目的地に到着し、車を降りると、今度はこちらを見ているようでした。
帰る頃には、その姿はもうありませんでした。

そこには広い自然が広がっています。カマキリは、思いがけず車に乗って、まったく違う場所へやってきたことになります。
これから、この広い自然の中でどんなふうに暮らしていくのでしょうか。

私なら、突然まったく知らない場所に来てしまったら、途方に暮れるだろうなと思います。
けれど、あのカマキリは、前を向いて、どこかへ進んでいこうとしているように見えました。

人もまた、思いがけない出来事をきっかけに、思いもしなかった場所へたどり着くことがあるのかもしれません。

私はいま、どこにいるのだろうか。

ふとそんなことを思いながら、カマキリの小さな旅を振り返りました。